2023年11月 活動報告②
先日お伝えした通り、今回は11月13日から15日に実施した共生社会推進特別委員会の県外視察について報告します。こちらは前回報告の海外視察とは違い、県議会が行う正式な公務なので県職員である議会局書記も同行する視察です。今年度は同委員会の委員長に指名されたので、昨年度務めた厚生常任委員会の委員長と同じく視察のコーディネートが大切な仕事のひとつとなります。特別委員会の県外視察は通常毎年1回11月に実施されますが、コロナ禍では自粛となったのでまさに4年振りに実施です。委員会メンバー15~16人の大所帯による視察ですから、書記のY君と8月末頃から準備に取り掛かりました。偶然にもY君は、昨年の常任委員会でもコンビを組んだ気心の知れた仲です。共生社会推進特別委員会の調査事項は、障がい者福祉・高齢者福祉・部活動の地域移行など多岐にわたりますが、二人で全国の先進的な取り組みをネットや新聞などで調べることから準備はスタートしました。ちょうどその時期、福岡県のテレビ局でアナウンサーをしていた学生時代の友人から「お互い今年で定年だな!」と連絡があったので、九州で参考になるような取り組みをしている自治体や施設はないかと聞いてみました。さすが報道の現場いた経験を活かして、すぐに福祉関連・スポーツ関連の資料を大量にメールで送ってくれました。やっぱり持つべきものは友ですね。あとは面白そうなところをピックアップして、Y 君がアポ取りしてくれました。
そんなこんなで今年の特別委員会の視察は、熊本県と福岡県に決定しました。最初の調査先は、熊本県の南関町役場です。南関町は熊本県の最北西側に位置し、すぐ隣は福岡県となる県境の自然豊かな静かな街でした。教員の働き方改革を目指す政府は、全国自治体に対し公立中学校における休日等の部活動の地域移行を推進する旨の通達を出しています。これに対して南関町はいち早く反応し、令和3年度から民間の総合型地域スポーツクラブと連携して、休日の部活動の地域移行を進めて来ました。神奈川県では秦野市が積極的な取組を行っていますが、県全体で見ればまだまだ暗中模索。南関町のように人口減少という課題を抱えた小さな自治体が、早くからこの問題に取り組み、国の指定を受け、子どもたちの部活動を守ろうとしている姿勢に気概を感じました。何と言っても、南関町のゆるキャラの名前は「なんかんトッパ丸」ですから。きっと難関を突破してくれると思います。
翌日は、熊本を後にして福岡県へ。こちらも部活動の地域移行に関して革新的な取り組みを実践している福岡大学を訪問しました。大先輩で当委員会の委員でもありる森正明議員(平塚市)の母校ということもあり、視察も好意的に受け入れていただきました。福岡大学スポーツ健康まちづくりコンソーシアム(FUスポまち)は、同大学が有するスポーツ資源(施設・指導者・学生)を活用し、スポーツによる地域振興を進めています。大学が中心となり、自治体・スポーツ団体・地元プロスポーツチーム・企業が連携して、高齢者スポーツ・障がい者スポーツの機会の提供を行っていますが、中でも力を入れているのが中学部活動の地域移行です。全国的に不足しているグランド等のスポーツインフラも大学には確実にありますし、指導者についても一定の報酬が出るため選手(学生)が積極的に参加できます。今は国の補助金がありますが将来的な資金面の課題についても企業と連携することにより可能性が広がります。この事業を担当する福岡大学サッカー部監督も務める乾真寛教授の説明は、まさに「目から鱗」でした。「神奈川県にも大学はいっぱいありますよね?相談してみてはいかがですか」の言葉に、今まで発想できなかったことが恥ずかしくなりました。部活動の地域移行は、常に施設・指導者・費用の課題が付きまといますが、福岡大学の取り組みはこうした課題にしっかり対応しています。大学との連携は今後の大きなヒントになると感じました。
部活動の地域移行をテーマに、南関町と福岡大学という対照的な二つの取り組みを調査して気付いたことは、地域の特性に合わせた施策が重要だということです。神奈川には横浜・川崎などの都市部と人口減少が進む過疎地が混在しています。それぞれの取り組みを今後の神奈川県における公立中学校の部活動地域移行に活かすために、更に議論を深めていきたいと思います。
その後は福岡市内の高齢者施設を訪ねて、高齢者福祉の現場の状況確認と意見を聴取。「よりあいの森」は郊外の閑静な住宅地の中に忽然と現れた、まるでジブリの世界感のような樹木に囲まれて施設でした。ここでは国の介護保険制度のカリキュラムにとらわれない認知症対応型通所介護サービスを提供しています。古い民家を改修・増築して利用しているので、一般的な高齢者施設のような閉鎖的な感じはなく、利用者はのんびりのびのびと時間を過ごしているように感じました。そこからバスで30分程移動して市街地へ向かい、こんどは「宅老所よりあい」を視察。こちらは先程の「よりあいの森」の原型だった施設です。創設者が、独居老人の居場所や親の認知症に悩む子世代のために、近所のお寺の敷地を借りてスタートしたのが「宅老所よりあい」でした。その後入所希望者が増えて、郊外に「よりあいの森」を開設したようです。この両施設は、どちらも入所者(利用者)がまるで自宅で過ごしているかのように、決まったプログラムは設けていません。思い思いに過ごしながら、必要に応じて職員が手助けをする。その内、自然発生的に入居者同士でゲームやお茶会が始まる。最近の高齢者施設としては珍しいスタイルですが、個々が自立していて寧ろ認知症対策に効果があるのではないかと感じました。人にはそれぞれ個性がありますし、認知症の度合いも人によって差があります。一口に高齢者施設と言っても、利用者や家族にとって様々な選択肢がある事は大切だと痛感しました。神奈川の取組の参考にしたいとと思います。
最終日は福岡市の障害福祉の取り組みを調査するため、まずは福岡市社会福祉事業団を訪問しました。福岡市では、平成16年に発生した県内の入所者虐待事件をきっかけに、強度行動障がい者への支援や、施設に対する考え方の方向性が変わりました。津久井やまゆり園事件があった神奈川県と似ています。そして福岡市は、平成27年度から「強度行動障がい者集中支援モデル事業」を立ち上げ、事業団は障がい者行動支援センター「か~む」を開設しました。早速、強度行動障がい者の受入れを開始しますが、3ヶ月の集中支援期間ではグループホームへの移行は難しいのが現実です。そこで、平成30年に「かーむ」と移行型グループホームを合体させ、臨機応変な支援が行えるような施設にシフトしたとの事でした。説明の後、実際に「かーむ」の視察も行いましたが、そこで見聞きしたことはあえて詳細な報告はしません。ショックでした。強度行動障がいの現実と、職員の方の苦労が身に染みてわかりました。これは本当に難しい問題です。黒岩知事はよく「当事者目線の障害福祉」と言いますが、そんな簡単に「当事者目線」になんてなれないと思います。障害を持つ当事者は千差万別、人それぞれ人格や症状が異なります。家族だってそうです。様々な状況に置かれています。簡単に「当事者目線」なんて言葉を使ってはいけないと感じました。グループホームへの移行もそうです。近年はグループホームへの移行が目的のように言われますが、障がい者本人やご家族にも様々な事情があり、全ての方がグループホームでいいのか一概には言えません。本当に難しい…。でも、行政はどんな状況でもどんな症状の方でも、全力で支えていく義務があります。逃げることは決してできません。障害福祉の道程は、長くて険しいものだと改めて知ることが出来ました。でも、行政や議会はこの現実から目を逸らさず、失敗を重ねながらでもあきらめず地道に、一人ひとりに向き合っていくことが必要だと学びました。有意義な視察だったと思います。
さて、久しぶりに海外・県外視察を実施したので、今月は2回に分けてじっくり腰を据えて報告させていただきました。議員の視察、少しはご理解いただけたでしょうか?もちろん、終始まじめでガチガチな時間だけではありません。視察を終えてホテルに戻れば、その土地の名産に舌鼓を打ち、美味しい酒を飲み、普段は議会内でしか接点のない委員同士で語るのも良いものです。所属する会派が異なれば、視察が数少ないコミュニケーションのチャンスでもあります。ただし、皆さんに知っておいていただきたのですが、宿泊費に含まれる朝食を除き視察中の昼食・夕食などの食事代は全て自費だということです。一部報道で、あたかも税金を使って地方議員が視察先で宴会を開いているかのような映像が流れますが、これは間違いです。視察中の昼食も、終わった後の夕食も自腹だということご理解ください。一部マスコミの「印象操作」にはご注意を!
つい調子に乗って本当に長くなってしまいました。すみません。年内の投稿はこれで最後となります。皆様、良いお年を迎えてください。来年もよろしくお願いいたします。