活動ブログ 2023年12月

12月 30 12月30日

2023年11月 活動報告②

先日お伝えした通り、今回は11月13日から15日に実施した共生社会推進特別委員会の県外視察について報告します。こちらは前回報告の海外視察とは違い、県議会が行う正式な公務なので県職員である議会局書記も同行する視察です。今年度は同委員会の委員長に指名されたので、昨年度務めた厚生常任委員会の委員長と同じく視察のコーディネートが大切な仕事のひとつとなります。特別委員会の県外視察は通常毎年1回11月に実施されますが、コロナ禍では自粛となったのでまさに4年振りに実施です。委員会メンバー15~16人の大所帯による視察ですから、書記のY君と8月末頃から準備に取り掛かりました。偶然にもY君は、昨年の常任委員会でもコンビを組んだ気心の知れた仲です。共生社会推進特別委員会の調査事項は、障がい者福祉・高齢者福祉・部活動の地域移行など多岐にわたりますが、二人で全国の先進的な取り組みをネットや新聞などで調べることから準備はスタートしました。ちょうどその時期、福岡県のテレビ局でアナウンサーをしていた学生時代の友人から「お互い今年で定年だな!」と連絡があったので、九州で参考になるような取り組みをしている自治体や施設はないかと聞いてみました。さすが報道の現場いた経験を活かして、すぐに福祉関連・スポーツ関連の資料を大量にメールで送ってくれました。やっぱり持つべきものは友ですね。あとは面白そうなところをピックアップして、Y 君がアポ取りしてくれました。

そんなこんなで今年の特別委員会の視察は、熊本県と福岡県に決定しました。最初の調査先は、熊本県の南関町役場です。南関町は熊本県の最北西側に位置し、すぐ隣は福岡県となる県境の自然豊かな静かな街でした。教員の働き方改革を目指す政府は、全国自治体に対し公立中学校における休日等の部活動の地域移行を推進する旨の通達を出しています。これに対して南関町はいち早く反応し、令和3年度から民間の総合型地域スポーツクラブと連携して、休日の部活動の地域移行を進めて来ました。神奈川県では秦野市が積極的な取組を行っていますが、県全体で見ればまだまだ暗中模索。南関町のように人口減少という課題を抱えた小さな自治体が、早くからこの問題に取り組み、国の指定を受け、子どもたちの部活動を守ろうとしている姿勢に気概を感じました。何と言っても、南関町のゆるキャラの名前は「なんかんトッパ丸」ですから。きっと難関を突破してくれると思います。

翌日は、熊本を後にして福岡県へ。こちらも部活動の地域移行に関して革新的な取り組みを実践している福岡大学を訪問しました。大先輩で当委員会の委員でもありる森正明議員(平塚市)の母校ということもあり、視察も好意的に受け入れていただきました。福岡大学スポーツ健康まちづくりコンソーシアム(FUスポまち)は、同大学が有するスポーツ資源(施設・指導者・学生)を活用し、スポーツによる地域振興を進めています。大学が中心となり、自治体・スポーツ団体・地元プロスポーツチーム・企業が連携して、高齢者スポーツ・障がい者スポーツの機会の提供を行っていますが、中でも力を入れているのが中学部活動の地域移行です。全国的に不足しているグランド等のスポーツインフラも大学には確実にありますし、指導者についても一定の報酬が出るため選手(学生)が積極的に参加できます。今は国の補助金がありますが将来的な資金面の課題についても企業と連携することにより可能性が広がります。この事業を担当する福岡大学サッカー部監督も務める乾真寛教授の説明は、まさに「目から鱗」でした。「神奈川県にも大学はいっぱいありますよね?相談してみてはいかがですか」の言葉に、今まで発想できなかったことが恥ずかしくなりました。部活動の地域移行は、常に施設・指導者・費用の課題が付きまといますが、福岡大学の取り組みはこうした課題にしっかり対応しています。大学との連携は今後の大きなヒントになると感じました。

部活動の地域移行をテーマに、南関町と福岡大学という対照的な二つの取り組みを調査して気付いたことは、地域の特性に合わせた施策が重要だということです。神奈川には横浜・川崎などの都市部と人口減少が進む過疎地が混在しています。それぞれの取り組みを今後の神奈川県における公立中学校の部活動地域移行に活かすために、更に議論を深めていきたいと思います。

その後は福岡市内の高齢者施設を訪ねて、高齢者福祉の現場の状況確認と意見を聴取。「よりあいの森」は郊外の閑静な住宅地の中に忽然と現れた、まるでジブリの世界感のような樹木に囲まれて施設でした。ここでは国の介護保険制度のカリキュラムにとらわれない認知症対応型通所介護サービスを提供しています。古い民家を改修・増築して利用しているので、一般的な高齢者施設のような閉鎖的な感じはなく、利用者はのんびりのびのびと時間を過ごしているように感じました。そこからバスで30分程移動して市街地へ向かい、こんどは「宅老所よりあい」を視察。こちらは先程の「よりあいの森」の原型だった施設です。創設者が、独居老人の居場所や親の認知症に悩む子世代のために、近所のお寺の敷地を借りてスタートしたのが「宅老所よりあい」でした。その後入所希望者が増えて、郊外に「よりあいの森」を開設したようです。この両施設は、どちらも入所者(利用者)がまるで自宅で過ごしているかのように、決まったプログラムは設けていません。思い思いに過ごしながら、必要に応じて職員が手助けをする。その内、自然発生的に入居者同士でゲームやお茶会が始まる。最近の高齢者施設としては珍しいスタイルですが、個々が自立していて寧ろ認知症対策に効果があるのではないかと感じました。人にはそれぞれ個性がありますし、認知症の度合いも人によって差があります。一口に高齢者施設と言っても、利用者や家族にとって様々な選択肢がある事は大切だと痛感しました。神奈川の取組の参考にしたいとと思います。

最終日は福岡市の障害福祉の取り組みを調査するため、まずは福岡市社会福祉事業団を訪問しました。福岡市では、平成16年に発生した県内の入所者虐待事件をきっかけに、強度行動障がい者への支援や、施設に対する考え方の方向性が変わりました。津久井やまゆり園事件があった神奈川県と似ています。そして福岡市は、平成27年度から「強度行動障がい者集中支援モデル事業」を立ち上げ、事業団は障がい者行動支援センター「か~む」を開設しました。早速、強度行動障がい者の受入れを開始しますが、3ヶ月の集中支援期間ではグループホームへの移行は難しいのが現実です。そこで、平成30年に「かーむ」と移行型グループホームを合体させ、臨機応変な支援が行えるような施設にシフトしたとの事でした。説明の後、実際に「かーむ」の視察も行いましたが、そこで見聞きしたことはあえて詳細な報告はしません。ショックでした。強度行動障がいの現実と、職員の方の苦労が身に染みてわかりました。これは本当に難しい問題です。黒岩知事はよく「当事者目線の障害福祉」と言いますが、そんな簡単に「当事者目線」になんてなれないと思います。障害を持つ当事者は千差万別、人それぞれ人格や症状が異なります。家族だってそうです。様々な状況に置かれています。簡単に「当事者目線」なんて言葉を使ってはいけないと感じました。グループホームへの移行もそうです。近年はグループホームへの移行が目的のように言われますが、障がい者本人やご家族にも様々な事情があり、全ての方がグループホームでいいのか一概には言えません。本当に難しい…。でも、行政はどんな状況でもどんな症状の方でも、全力で支えていく義務があります。逃げることは決してできません。障害福祉の道程は、長くて険しいものだと改めて知ることが出来ました。でも、行政や議会はこの現実から目を逸らさず、失敗を重ねながらでもあきらめず地道に、一人ひとりに向き合っていくことが必要だと学びました。有意義な視察だったと思います。

さて、久しぶりに海外・県外視察を実施したので、今月は2回に分けてじっくり腰を据えて報告させていただきました。議員の視察、少しはご理解いただけたでしょうか?もちろん、終始まじめでガチガチな時間だけではありません。視察を終えてホテルに戻れば、その土地の名産に舌鼓を打ち、美味しい酒を飲み、普段は議会内でしか接点のない委員同士で語るのも良いものです。所属する会派が異なれば、視察が数少ないコミュニケーションのチャンスでもあります。ただし、皆さんに知っておいていただきたのですが、宿泊費に含まれる朝食を除き視察中の昼食・夕食などの食事代は全て自費だということです。一部報道で、あたかも税金を使って地方議員が視察先で宴会を開いているかのような映像が流れますが、これは間違いです。視察中の昼食も、終わった後の夕食も自腹だということご理解ください。一部マスコミの「印象操作」にはご注意を!

つい調子に乗って本当に長くなってしまいました。すみません。年内の投稿はこれで最後となります。皆様、良いお年を迎えてください。来年もよろしくお願いいたします。

12月 22 12月22日

2023年11月 活動報告①

一度投稿のタイミングが遅れると、なかなか元に戻らないですね(汗)。先月に続き、今月も活動報告をアップする時期がだいぶ遅くなってしまいました。申し訳ありません。年明けからは、月の頭に前月の報告ができるよう頑張ります。

さて、11月は後半になるまで議会はお休みです。コロナ前は、11月上旬~中旬が8月に次ぐ「視察月間」となるのですが、コロナ禍においては当然の事ながら、しばらくの間海外は勿論のこと、国内の視察(出張)も自粛状態でした。昨年の11月に、常任委員会の県外視察が復活するまで、丸2年間は公務で神奈川県内を出ることはありませんでした。しかし、新型コロナが5類に移行して以降、世の中の流れと共に我々議員の視察も通常に戻りつつあります。そこで今回の報告は、11月に実施した二つの視察について、内容が盛り沢山なので2回に分けて報告したいと思います。今年は各メディアで、国会議員等の海外視察が批判を受ける報道が目立ちましたが、正直申し上げれば一部偏った報道の仕方もあったと感じています。ちゃんと説明をすれば、議員の視察も意味がある活動だと納得していただけるものであり、そういった意味も込めて報告したいと思います。

まず最初は、11/5~10の日程で4年振りの海外視察となったベトナムとカンボジアの視察を報告します。自民党県議団「国際協力議員の会」は、海外(アジア中心)で頑張っている神奈川に所縁のある日本人を応援しよう、あるいは日本で仕事や勉強をして活躍したいと願っているアジアの若者を応援しよう、という趣旨で発足した有志の議員連盟、いわゆる「議連」です。過去にはフィリピンのボホール島で、障がい者施設を立ち上げた横浜出身の女性を応援し、衣料品・食料品・サッカーボール等を届けに行きました。彼女とその施設とは、今でも物資を送ったり、お手紙を頂いたりと交流があります。そんな「国際協力議員の会」の今回の海外視察の主たる訪問先はカンボジアでしたが、現在は直行便が無いとのことでベトナム経由で向かうこととなり、最終的に神奈川県と友好な関係にあるこの2国を訪問することにしました。

最初に訪問したベトナムのハノイ市は、過去3回「神奈川フェスティバルinハノイ」が開催されたり、ハノイ郊外にある「神奈川インダストリアルパーク」では、これまで24社の県内企業が進出しています。まず、JICAハノイ事務所でブリーフィングの後、「日越科学技術国際連携センター(VJIC)」を視察しました。VJICはル・クイドン工科大学の中に今年3月に設立されたばかりで、日本の技術系の大学と共同研究を進め両国の技術交流をサポートしています。センター長のグエン・クオック・ディン准教授は、日本の防衛大学などで学び、日本に対する理解・見識が高く、日本の技術を母国に浸透させることへの強い情熱を感じました。次に訪れたのは「日越人材開発インスティテュート(VJCC)」。解りやすく言えば、国際人材育成機関ということになります。中でも2002年に設立された「日本人材開発センター」は、日本政府の支援でアジア諸国9か国10都市にあり、ベトナムはハノイとホーチミンの2ヵ所に設置された唯一の国とか。日本へのリスペクトが感じられます。同センターでは、ビジネス研修はもとより日本語教育も行われ、日本企業とのネットワークも構築されています。既に17期の卒業生が両国間のビジネスシーンで活躍中。当日は、日本企業による就職相談ブースが出展しているイベント会場も見学し、在学中の18期生と意見交換(もちろん通訳付き)もできました。研修生たちの親日感情はとても高いと感じた一方で、円安などの影響もあり待遇面や環境面で日本で就職することには魅力を感じない、との意見が多くあったのも事実です。一昔前は考えられない事です。少しショックでしたが、こうした意見はまさに現地でこそ聞ける話であり、やはりこちらから出向いていく価値はあったと思いました。今や人手不足・人材不足に悩む日本企業は多く、海外人材・労働力の確保は重要なテーマです。こうした状況にありながらも、親日家のベトナム人でさえ日本て働くことに魅力を感じないという実態…。今後の日本経済にとって、大きな課題が突き付けられたベトナム視察でした。

次に目指したのは、カンボジアのシュムリアップ。ハノイから1時間半ほどのフライトでした。シュムリアップは、かの有名な世界遺産「アンコールワット」がある街です。もちろん目的地は「アンコールワット」。とは言っても、観光が目的ではありません!ではなぜアンコールワットなのか?「国際協力議員の会」が発足したのは約25年前。アンコールワットは厳しい自然環境などの影響で劣化が進んでいましたが、残念ながら当時のカンボジアは遺跡の修復等の知識や技術を持った人材に乏しく、世界各国に向け修復作業を依頼していた時代背景があったと聞きます。こうした状況の中、日本の上智大学のチームが劣化が進むアンコールワットの修復作業に乗り出したことを、当時「国際協力議員の会」の会長だった私の叔父である新堀典彦は知りました。これこそ日本の高い技術を世界にアピールする絶好の機会と感じた叔父は、「国際協力議員の会」として何かお手伝いが出来ないかと考えたようです。自ら上智大学に働きかけ、現地で作業する大学生の支援に加え、いつまでも海外に依存してはいけないとカンボジア人を研修生として神奈川県に招き、知識や技術を習得するためのお手伝いをしたようです。こうした歴史のある神奈川県とアンコールワットに、今年11月に一つの節目が訪れました。日本チームが担当した遺跡の表玄関と言える「西参道」の修復工事が25年の歳月を経て完成したのです。当時から作業に関わっていた上智大学の三輪教授から「是非、見に来てに来て欲しい」とのお話もあり、今回の視察が実現しました。もちろん、修復作業の全て終了したわけではなく、早稲田大学チームによる「バイヨン寺院」の補修作業などはまだまだ道半ば。日本チームの作業はこれからも延々と続きます。私たちは二日間にわたり広大な敷地内での作業現場を視察し、これまでの経緯やこれからの課題についてお話を伺いました。また三輪教授の計らいで、当時作業に参加した研修生の皆さんとの交流の場も設けていただきました。現在は日本の文科省に当たる政府機関で働くソックニーさんは、研修で神奈川に訪れた際、叔父に大変お世話になったと、懐かしそうに当時の思い出を語ってくれました。今は亡き叔父と撮った写真を見せていただき、恥ずかしながら涙腺が緩んでしまう事態となったのを覚えています。国際協力の名のもとに日本が誇る技術を伝承し、今現在でもカンボジアの人たちと太い絆で繋がれたことに感動し、多くのことを学びました。そして、同じ日本人がカンボジアで奮闘していることを、もっと多くの人に知ってもらいたいとも感じました。

その他では、遺跡にほど近いホテルの中に事務所を構える日本領事館シュムリアップ事務所を表敬訪問し、コロナが落ち着いたカンボジアの観光の状況や、日本とカンボジアの国交の歴史、現地での日本人の活動など伺いました。その後は、実際に現地で活躍している日本人の方々に直接お会いしてお話を聞くことに。19歳で日本を離れカンボジアで胡椒を栽培・販売して好評を得て、日本へ輸出も行い大成功を収めた26歳の若き経営者や、青年海外協力隊として主に小学校などの教育現場で教育カリキュラムの普及や人材育成に従事している方々との意見交換を行いました。その中の一人はなんと前職が横浜市教育委員会で、私の地元「日枝小学校」で数年前まで教鞭を振るっていたとの事。世界は狭い!そして異国の地で子どもたちにために日々全力で働いている皆さんに頭が下がる想いでした。「国際協力議員の会」は、視察先で青年海外協力隊の方と意見交換をすることが恒例となっていますが、その度に自分には無理だなあ…とつくづく感じます。途上国の教育現場は、こうした協力隊の力で支えられている部分も大きいのではないでしょうか。自分が直接何もできない分、これからも海外で頑張る日本人を応援していきたいと思いました。あっ!言い忘れましたが、前述したペッパーソムリエの木下澪那さんの胡椒、本当に美味しかったです。粉末状の調味料の胡椒はもちろんですが、胡椒の実をそのまま食べる「ペッパーキャビア」が気に入りました。お土産で買ってきて自宅の食事でサラダなどに振りかけて食べてます。あと、お店で食べた「胡椒アイスクリーム」も絶品でしたよ。カンボジアに旅行する際は、是非お試しください。

    

さて、長くなってしまいましたので、久しぶりの海外視察のご報告はこの辺で終わりにします。近々、11月中旬に実施した、特別委員会の県外視察(熊本・福岡)についてご報告いたします。